世の中には、新しい技術や概念など、まだ情報量が少なかったりそのものの定義が曖昧なものがたくさんあります。理解したいと思っても情報が点在していて全体を捉えづらい。今回は、そんな「未知なるものの学び方」をテーマに、FLOCブロックチェーン大学校で講師も務めるブロックチェーンエンジニア 赤澤直樹さんにお話を伺いました。
高校では理系クラスを選択していたにも関わらず、大学ではフランス語学科を専攻、その一方でフリーランスエンジニアとしてAIやビッグデータ活用のプロジェクトに参画、そして大学院では経営学の領域で研究を進めながら、エンジニアとして企業から様々な案件を受注しつつ、今は講師としてブロックチェーンについて教鞭を執るという一風変わった経歴の持ち主でもある赤澤さん。そのバックグラウンドにも学び方のヒントが隠されていそうですが、どんな人生を歩んできた方なのでしょうか?
高校生の時に初めて知ったNASAプロジェクトチームが全ての始まり
赤澤:高校時代は理系クラスに所属していたのですが、「この先の人生には色々な可能性や選択肢がある中で、この段階で文系・理系って決めてしまうのもどうなんだろうな」という思いがありました。
また、ドキュメンタリーで観たNASAのプロジェクトチームにすごく刺激を受けて……人種・国籍・年齢・性別関係なく、世界中から優秀な人が集まってきて、同じ目標に向かって頑張るっていうのが純粋に「かっこいいな」と思って、将来はそういう環境で働きたいなという想いが芽生えたのもこの頃でした。
大学に進学。「苦手な言語系を学ぼう!」と思い立ち、なぜかフランス語を専攻
赤澤:「文系・理系」と決めずに、その後の人生の選択肢を幅広く持ちたいという考えから、文理融合の総合学部のある広島大学に入学しました。文理融合ということで、文系理系両方の学科が選択肢にある中で、ふと思い立ったのが「苦手な言語系を学ぼう」ということでした。将来的に、NASAのプロジェクトチームのように世界中の人とチームを組むことをイメージしていたので、英語でコミュニケーションできるようにならないと話にならないですし、そういった考えもあり「言語文化プログラム」というコースを専攻することにしました。
AIやデータ解析を学んだ理由は「普通のアルバイトより稼げそうだし、この先につながる」
赤澤:すごくリアルな話なのですが、まず「生活費を稼ぐ」というのが一番の目的としてありまして。稼ぐ手段としては、普通に飲食店でアルバイトとか色々あったのですが、「どうせ同じ稼ぐなら、この先につながる何かで稼ぎたい」と思ったんです。そして、自分の武器というか、スキルを考えてみた時に「データの分析はできるな」と思って調べてみたところ、データ分析・データサイエンスといった分野が今はホットだということがわかってきて。「これでお金を稼げるんじゃないかな」と思ったんです。そこから、その仕事をするためにデータ分析まわりのことを少し勉強して、クラウドソーシングで、フリーランスとして仕事を受け始めることにしました。
100%の知識がなくても「まずは実際に手を動かして作ってみる」こと
赤澤:本を読む、検索する、また当時は大学院生だったので大学の論文をダウンロードして読みまくる。使えるものは全部使い倒して調べる。そして、一通りのインプットをした上で、一番重要なのが「実際に手を動かして開発してみる」つまりアウトプットするということでした。
STAGE編集部:執筆された書籍のタイトルにもある「手を動かして」というキーワードですね。
赤澤:そうですね。実際にやってみるってものすごく大切だと思うんです。泳げるようになりたいのに、プールサイドで練習していても、絶対泳げるようにはならないじゃないですか。プールに入って、実際に足をバタバタさせて、時には溺れかけながら「こうやって手足を動かすんだ」って泳ぎ方を覚えていく。それと同じような感じで、仮に知識が足りなかったとしても、「こうかな?」とか想像力を働かせて手を動かしてみて実際にプログラムが動けば、後から「これってこういう意味だったんだ」ってわかってきたりするので、100%の知識がなくてもまずは行動してみることが大事なんだと思いました。
サトシナカモトのビットコイン論文を読み、ブロックチェーンという発想に感動
赤澤:そうですね。大学院の勉強をしながらAIのシステム開発やWebのアプリケーション開発などのプロジェクトも行っていたので忙しい時期もありましたが、案件のある時ない時でムラはありましたね。プロジェクトがない時期は、開発案件ではなく技術系の記事を書くという仕事も請け負っていたのですが、記事のテーマの中にAI・IoT・そしてブロックチェーンがありました。
ちょうど同じ頃、知り合いがビットコインの始まりと言えるサトシナカモトの論文の存在を教えてくれて、「記事を書く参考になるかな」ぐらいの気持ちで読んでみたら、これがめちゃくちゃおもしろくて。一番感動したポイントは、その発想力。ブロックチェーンって、実は使っている技術自体はそんなに新しいものじゃなくて、むしろ既に使い倒されている古い技術ばかりなんですが、それをつなぎあわせて全く新しい技術にした、つまり「技術力じゃなくて発想力で新しい技術を創り出した」んですよね、そのことに大きな衝撃を受けました。その論文はビットコインについて書かれたものでしたが、それをきっかけにブロックチェーンを勉強したり、他の暗号通貨についても調べるようになっていきました。
赤澤 直樹(Naoki Akazawa)
▼FLOCブロックチェーン大学校
https://floc.jp/