新進気鋭のシェフ田村浩二氏がプロデュースしたハイセンスなバラのアイスクリームFRAGLACE。オーガニック栽培のバラ「YOKOTA ROSE」を香り高く閉じ込めた逸品で、甘さをぐっと抑えた大人の味わい。甘さが香りを邪魔しないので、バラそのものの香りを食べる感覚を楽しめます。
田村氏がシェフをつとめるレストランTirpseにて、FRAGLACEの取り組みに込められた思いを田村氏とビジネスパートナーの小澤氏にお聞きしました。
2018.3.31
STAGE編集部:FRAGLACE立ち上げのきっかけを教えてください。
田村浩二(以下田村):一昨年の夏に、環境省が始めた「森里川海プロジェクト」のキックオフイベントの料理を担当して欲しいっていう依頼を受けまして。当日、僕が料理をした時の、カメラマンだったのが小澤です。起業メンバーの3人はもともと畑が全然全然違うんですよ。僕がシェフで、小澤がマーケター、木村が研究者。
小澤:今日同席はしていないんですが、役員のひとり木村は、そのイベントの主催者側にいたんですよ。
田村:そこで初めて3人が知り合って、僕の店に食事に来てくれるようになって。いろいろな食材を紹介してくれるようになりました。僕も、よく生産者の方に会いに行っていたので、じゃあ一緒に行こうか、という話になって。地方を一緒に回る中で出会ったのがエディブルフラワーの生産者、横田さんのバラです。ビニールハウスに入った瞬間に、このバラすごいと思って。……とにかく香りがすごい。
小澤:木村が島根大学と連携して研究したところ、横田ローズの香り成分含有量は、平均的なバラの3840倍というすごい数値が出ました。そうすると、食材の価値を数字で証明できるアプローチができるので、トップシェフなどに伝えていけば、取り扱ってもらえる。このファクトとエビデンスを組み合わせていけば、ブランドの輪郭ができるんじゃないかと思いました。
田村:まず、うちのレストランで使い始めたんですよ。アイスクリームを作って、お店で出し始めました。そこで横田さんにも来て頂いて、実際食べて頂きました。これは商品として出してもいいんじゃないかという話になったので、そこから一気に工場探しです。
小澤:製造は「NPO法人歩実」にお願いすることにしました。木村は、水耕栽培の野菜や花を育てる工場の設計も専門のひとつなのですが、NPO法人「歩実」の水耕栽培設備を木村が手掛けたんです。そのご縁で。この工場は障害者施設でもあるのですが、バラ以外のエディブルフラワーの栽培と、アイスクリームの製造を、両方お願いしています。
田村:単純にアイスを売りたいって言うよりは、もっとバラを色んな方に知ってもらいたいのと、生産者を応援したい、という気持ちがあります。そこに農福連携というコンセプトをアイスを通して、伝えていければな、っていうのが一番の思いです。
STAGE編集部:商品作りで苦労したことは?
田村:ここで作ってここで食べてもらうだけなら、言ったら簡単なんですよ。おいしいものを作ればいいだけなので。でもそれを、不特定多数の人に食べてもらうってことは、状態を維持しなきゃいけないとか、衛生的な管理、保健所の審査をクリアしなきゃいけないなど制約が多い。本来だったら、加熱を1回するだけで香りを出せるものを、香りを出した後に、もう1回殺菌のために加熱をしなきゃいけないとか……。
小澤:そのレシピをまた、施設のスタッフが、しっかりと実装できないといけないので、大変です。
田村:自分の想定してた仕上がりと、必ず同じものができてこない、っていうのが最初すごく大変でした。自分が現場で作るわけではないので、1回作ってできたもの食べて、こうしましょう、って落とし込んでいきました。
小澤:希少なバラですし、生産者に正当なリターンをするので、どうしても普通のアイスクリームとは、値段が違います。ワンカップ900円なので。だから、しっかりストーリーを伝えるところも、頑張っていきたいです。
STAGE編集部:もともと、生産者を応援したいという思いは強かったんですか?
田村:そうですね。現場に行ってお話をすると、農家さんに、こういうものを作っているんだけど、どこに販売したらいいかな、とか相談されます。今後、担い手も探さないといけないという問題も切実です。僕らがPRして、実際に野菜などを使い、それを発信するというサイクルを続ける中で、農家さんに注目が集まって収益も上がり、若者が農業ってかっこいいんだな、やりがいがあるんだな、となるといいなと思います。将来、自分達が料理を作る時に、いい食材が手に入らないとなったら、自分達の首を絞めることになります。いい料理を作る前に、まずいい食材を守っていくっていう部分を、もっと意識して、やっていきたいな、っていうのはあるんですよね。料理人である僕達が守っていかないと。
小澤:僕は日本全国の生産者を回って取材をして、ホームページを1日で作ったら、次の生産者へ……ということを2年間ぐらい繰り返し行っています。取材したのは延べ200名程ですね。その中にはプレゼンテーション上手な生産者さんもいるんですけど、アーティストのようにものづくりに振り切っている人って、PRの部分に興味が無かったりするんですよね。まさに横田さんもそう。ただ、横田さんもいいレストランに取り扱ってほしいし、バラ自体の知名度をもっともっと上げたい、という思いは強く持っています。そういうことが自分は得意じゃないから、小澤君ブランディングをお願いできないかと。何人かからお声掛け頂いたので、じゃあその気持ちに応えられるように頑張ろうって、このチームを組むことにしました。
STAGE編集部:お二人の「キャリア」についての考えを教えてください。
小澤: 僕はヤフージャパンの出身です。インターネットのマーケティングを勉強して独立しました。職種でいうとマーケターに属すると思います。「マーケティング」というと、非常に範囲が広いのですが、僕の場合は自分で写真も撮りますし、コピーも書きます。ホームページも作って、その後のプロモーションも全部自分でやっています。学生時代に「いいものを作る生産者を、ITでPRして収益化すること」を目標として定めてからは、そのために必要なスキルを横断的に身につけることを意識してやってきました。岡島悦子さんがおっしゃっている「キャリアドリフト」って考え方が好きで、ある程度の方向性を決めて、そこに漂いながらも徐々に向かっていくような、少し緩めのキャリア設定をしています。
田村:僕は12、3年、料理人として働いてきて、労働時間が長い、給料が少ない、休みが少ない、っていうのが今まで当たり前だったんですよ。でも料理人の在り方って、このままでいいのかな、っていうのをすごく感じるんですね。
大体料理人は、10年修行して、自分の店を出せば、一人前。そこからどう稼いでいくかみたいなところは、あまり話に上がりません。でも店を出した後どう生きていくかの方が大事なのに、シェフも、先輩もそういう話を全くしないんですよ。しないと言うより、できないんです。僕たちが、お店でシェフのもとで働いて学ぶことって、基本的には調理技術なんですよね。どういう作業をして、どういう食材を使って、どういう風に組み合わせていくか、しか知らない。お店を持った時に必要なことの話、たとえばお店にかかる経費がいくらで、実際、料理の原価率はどれくらいにして、どれくらいの人数を集客できると、これぐらい利益が残るから、生活ができるよね、という話は、全く無いんです。だからみんな、ひとりで手探りでやってくいんですね。結果、一部の、経営能力がある人のお店だけが流行って、有名シェフになっていくっていう。それ以外の人は、小さなお店をやって、夫婦2人でずっと営業して、子どもも作れないし、奥さんが休んでしまうと、1人でお店を回さなきゃいけなくなるから、ずーっと2人で、細々とやっていかなきゃいけない。そういう人が多いんですよ。それが幸せなら、それでもいいと僕は思うんですけど、それが幸せって言ってるのは、僕はちょっと嘘だと思う。
やっぱりお金を稼げるってことは、自分達がやっていることに対しての価値を、周りの方が見出してくれているってことなので。
大体料理人は、10年修行して、自分の店を出せば、一人前。そこからどう稼いでいくかみたいなところは、あまり話に上がりません。でも店を出した後どう生きていくかの方が大事なのに、シェフも、先輩もそういう話を全くしないんですよ。しないと言うより、できないんです。僕たちが、お店でシェフのもとで働いて学ぶことって、基本的には調理技術なんですよね。どういう作業をして、どういう食材を使って、どういう風に組み合わせていくか、しか知らない。お店を持った時に必要なことの話、たとえばお店にかかる経費がいくらで、実際、料理の原価率はどれくらいにして、どれくらいの人数を集客できると、これぐらい利益が残るから、生活ができるよね、という話は、全く無いんです。だからみんな、ひとりで手探りでやってくいんですね。結果、一部の、経営能力がある人のお店だけが流行って、有名シェフになっていくっていう。それ以外の人は、小さなお店をやって、夫婦2人でずっと営業して、子どもも作れないし、奥さんが休んでしまうと、1人でお店を回さなきゃいけなくなるから、ずーっと2人で、細々とやっていかなきゃいけない。そういう人が多いんですよ。それが幸せなら、それでもいいと僕は思うんですけど、それが幸せって言ってるのは、僕はちょっと嘘だと思う。
やっぱりお金を稼げるってことは、自分達がやっていることに対しての価値を、周りの方が見出してくれているってことなので。
まず、長く働くってのをやめるにはどうしたらいいか考えています。自分達で「技術料を料金に乗せます」って宣言して実行して、業界の体質を変えなければ。あとは、レストランという形の収益だけではなくて、自分の持っている技術と知識を、別の場所で別の形で、アウトソーシングしていく、という収益体系を作っていかないといけないと思うんです。
自分がいないと、お店のクオリティが下がってしまうなら、お店にいないといけないと思うんですよ。でも、ちゃんとお店のクオリティを保てるだけのシステムを作れるんであれば、それ以外の場所でも同じように構築していけばいいだけなので。そのためには、言葉で伝えられる、レシピで文章化したりだとか、数値化して伝えることができる、っていう能力も大事。そうしてスケールしていきたい。僕はそういうものの1つとして、アイスクリームを一緒にやらせてもらっています。
バラのアイスクリームは、たべられる花屋「EDIBLE GARDEN」の事業の一環です。「EDIBLE GARDEN」では「NPO法人歩実」のエディブルフラワーをはじめ、YOKOTA ROSEを販売。これら農福連携事業が評価され、買うことで社会貢献ができる商品やサービスを表彰する「ソーシャルプロダクツアワード2018」を受賞しました。
にて購入が可能です。