海風に誘われる、湘南辻堂の小さな一戸建て物語

あの日、辻堂の風に吹かれてふと思った。
「いつか、自分の店を持つなら、この場所がいい」――と。

JR東海道本線・辻堂駅から歩いて約15分。
駅前の喧騒を背に、海に向かってまっすぐに延びる道のりを歩けば、湘南の空気が徐々に濃くなっていく。自転車にサーフボードを載せた若者、麦わら帽子をかぶったおばあちゃん、裸足で走る子どもたち。ここには、“暮らしの中に海がある”という、湘南ならではの時間が流れている。

やがて現れるのは、大きな交差点の角地。周囲にはスーパーやカフェ、飲食店が立ち並び、地域住民の生活感とリゾート気分がほどよく混じり合っている。そんな場所に、白く新しい建物が建った。

正面には小さな木製のサインボード。扉を開けると、柔らかな自然光が差し込むワンフロア。
まだなにも置かれていないその空間には、可能性だけが満ちていた。

「ここでコーヒースタンドを始めたいんです」

そう語るのは、都内のカフェで5年の経験を積んだばかりのKさん。
30歳を迎える節目に、「自分の空間」を持つことを決めた。

この物件を知ったのは偶然だった。辻堂に暮らす友人が、「いま、面白い場所に新築店舗が建ったらしい」と教えてくれたのが始まり。
その時の彼女の言葉は、今でもよく覚えている。

「ここ、湘南辻堂の、海と街をつなぐ“間”にあるんだよ」

Kさんはすぐに見学を申し込み、現地に立ったとき、空気の温度が変わったのを感じたという。
それは、街の鼓動と海の鼓動が、ちょうど交差するような場所だった。

建物は新築の一戸建て。1階路面の南向きで、目の前には2台分の専用駐車場が確保されている。
店舗面積は44.31㎡（13.4坪）。小さいながらも動線が良く、レイアウト次第でベーカリーカフェ、雑貨店、美容サロンなど、様々な業態に対応できるポテンシャルを持っている。

実際、出店可能業態は飲食（重飲食含む）から、美容・エステ・物販・クリニックまで幅広い。
目の前を通るのは、地元住民はもちろん、海へ向かうサーファーや観光客たち。そんな多様な層にアプローチできる場所は、湘南エリアでもそう多くはない。

「お店の名前は《Umi to Coffee》にしました」

Kさんの構想は、朝7時から開けるコーヒースタンド。
自家焙煎の豆を丁寧にドリップし、地元ベーカリーから仕入れたクロワッサンを添えて提供する。

出勤前の会社員がコーヒー片手に通り過ぎる。
子どもを送った後のママたちが、ほっとひと息つきに立ち寄る。
そして、海へ向かうサーファーたちが、「行ってくるよ」と言いながらエスプレッソを一気に飲み干す。

夕方には少し照明を落として、クラフトビールと軽食を出すバータイムに切り替える予定だ。
そうすることで、朝から晩まで、さまざまな客層とライフスタイルに寄り添う店舗になる。

「この場所なら、ただの“店”じゃなくて、“日常に寄り添う居場所”を作れると思ったんです」

湘南辻堂エリアは、近年特に人気が高まっている。
大型商業施設「テラスモール湘南」や、充実した医療・教育インフラ、そして美しいビーチ。都市の利便性と自然の癒しを併せ持つこの街には、都内からの移住者も増えている。

すぐそばを走る大通り沿いには、蔦屋書店が運営するおしゃれな商業施設の「湘南T-SITE」もあり、辻堂の新しいおしゃれエリアだ。

その中で、辻堂駅から海へ向かう途中というこの物件の立地は、まさに「街と海をつなぐ架け橋」とも言える。
朝の散歩道、昼の買い物帰り、夕暮れのビーチ帰り――人が自然と通る場所にあるのが、この店舗の最大の魅力だ。

ある日、香織さんの店に、一人のサーファーが立ち寄った。
「すごくいい香りだね。コーヒーの匂いで、海の風景まで変わって見えるよ」

そんな一言が、何よりの褒め言葉だった。

人々の暮らしのなかに、自然と溶け込むように。
波音と珈琲の香りが交差する、その瞬間こそが、香織さんの描いた理想の風景だった。

今、この物件の扉は開かれている。
あなたの物語が、ここから始まることを、街も海も、きっと歓迎してくれるはずだ。

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