新しい年の到来は、誰にとっても気持ちが改まるもの。「今年は、こんな1年にしたい」「今年こそ、こういう自分に成長したい」と、声を大にして言わないまでも、心の中で自分なりの目標を掲げた人は多いはず。実は、そんな想いを実現に導くために年始にやっておきたい意外な“あること”があるんです。──『美しく生きる女のお金の作法』特別編集[第7回]
2018.1.1
「あなたのバッグの中身、見せてください」
あなたは、突然そう言われたら、バッグの中身をその場ですべて出して自信を持って見せることができますか?
「ええ、いいですよ。ほら」とすぐにバッグを開けて中身を取り出せる人は、きっと少数派。「自分でも忘れているような、へんなものが出てきたらどうしよう」「えっと……そもそも何が入っているんだっけ?」「とてもじゃないけど他人には見せられない……」というのがほとんどの女性の反応ではないでしょうか。
でも、自分らしく、凛として生きている女性の多くは、バッグの中身が洗練されています。
洗練されているとは、言い換えると「数が少なく、一つひとつが厳選されている」ということ。
バッグそのものが“外から見た自分”だとしたら、バッグの中身は“内なる自分自身”です。外から見た自分は多くの人が意識していますが、内側はついつい気を抜きがち。だからこそ、どれだけのものが入っているのか、どんなものが入っているのか、整理整頓されているか、不要なものが入れっぱなしになっていないか、などを見れば、その人自身が映し出されるのです。
持ち物が少ない人は、“モノのコスト”に敏感
これまで数多くの女性のお金の使い方を見てきましたが、基本的に、持ち物が少ない人にはマネーセンスの高い人が多いように思います。
なぜなら、持ち物が少ないということは、“モノのコスト”に敏感だから。
“モノのコスト”というと、それが商品として売られていた時に購入した価格を思い浮かべるかもしれませんが、実は、モノは「買ったあと」にもずっとお金がかかっています。
モノを買った後にかかる2つのコスト。それは、モノが占有するスペースにかかるコストと、維持にかかるコストです。
私たちが何か商品を買い、自宅に持って帰ると、それを置いておくのに必要なスペースには、その分の「家賃」が発生しています。小物が増えて整理棚を買わざるを得なくなったり、新しい洋服が増えてクローゼットが手狭になって広い家に引っ越ししたり、といったシチュエーションを想像するとわかりやすいですね。
それから、それを維持するためにかかるコスト。手洗いできないカシミヤのセーターであればクリーニング代が購入後もかかり続けますし、ルブダンのパンプスであればお手入れするにもそれなりのコストがかかるでしょう。
ここで伝えたいのは、「高いものだから維持コストが高くつく」という単純な話ではありません。100円ショップのグッズであっても、しょっちゅう壊れて買い直さないとならないのであれば、「いつも使える状態になっている」ということのために、やはり維持コストがかかります。つまり、モノはあればあるだけ、維持コストがかかるということです。
「モノを増やしすぎない」を心がける
そして、持ち物が少ない人は総じて、その数少ない持ち物の一つひとつが厳選されています。
ここ数年、注目されている「ミニマリスト(モノを最小限に抑えて暮らすライフスタイルの実践者)」いう生き方がまさにそれ。
モノの数こそ少ないけれど、一つひとつが想い入れのあるモノに囲まれているから、心理的に充足されている。そんなお金の使い方ができているといえます。
「ミニマリスト」にはなれなくても……
人の生き方はそれぞれですから、誰もがミニマリストになるのがよいわけではありません。そもそもみんながみんな、日々モノを減らすことを考えてストイックに生活できるわけでもないでしょう。かく言う私自身も無理です(笑)。
でも、そういった、“自分らしいお金の使い方”に目を向けるほどよいレッスンとして始めやすいのが、毎日使う「バッグの中身」の整理なのです。
試しに、今使っているバッグの中身を全部出してみてください。そして、優先順位の高いものからトップ7つに絞ってみましょう。絞ってみたら、それらが自分にとって心から愛着のあるものかを考えてみましょう。そうでないなら、「今年こそ、こういう自分に成長したい」という自分にコミットするために、買い換えるのもいいですね。
7つすべてが自分らしさのある、愛着が持てるものになれば、自分自身にもきっと自身が生まれてきます。なぜなら、バッグそのものが“外から見た自分”だとしたら、バッグの中身は“内なる自分自身”だから。
バッグの中身を減らすためのコツ
せっかくなので、実際にどうやってバッグの中身を減らすためのコツもいくつかお伝えしましょう。
まずひとつは、「機能を集約する」ということ。
最近は、スマートフォンの多機能化によってメモ帳や手帳を持ち歩かなくなったり、電子マネーはカードを持ち歩かずともスマホの中に入れられたりと“モノの集約化”をしやすくなっています。私の場合、細身ではありますが、黒と赤のボールペンとシャープペンシルが一体化したタイプのペンを愛用しており、これ1本で、鉛筆で書きたいメモから赤字で書きたい原稿のチェックまで、何でもこなせています。ちょっとの工夫でできる“集約”はまだまだありそうです。
もうひとつは、「本当に必要になったらその場で買おう」と割り切るということ。
携帯用の裁縫道具に、ウェットティッシュに、替えのストッキングに……と、女子力の高い人であればあるほど、持ち物は増えがち。でも、こういったものに本当に助けられる機会って、冷静になってみると1年に1回ぐらいだったりしませんか?
今の時代は、コンビニエンスストアは24時間やっていますし、いざとなれば助けてくれる同僚や友人も周りにいます。思い切って「いざというときのためのモノ」を減らすというのも大きなポイントです。
あえて「紙の本」を持ち歩く
そうそう、これまで「持ち物の数を減らす」というお話しをしてきましたが、ひとつ例外があります。
それは、「紙の本」です。
モノの集約ができたら、持ち歩いてよい7つのモノの最後の1枠を使って、今のあなたが成長するためのテーマの本を1冊、常にバッグの中に忍ばせておくのはいかがでしょうか。
流し読みする本や雑誌は、Kindleやdマガジンなどを活用して“集約”する一方で、自分を磨くための情報は、あえて紙の本から吸収する。こんなメリハリがあったら、情報との付き合い方も磨かれそうですね。
必要最小限の持ち物と自分の中身を磨く本だけが入ったバッグを持ち歩く。そんな毎日を続けていけば、少しずつかもしれませんが、確実になりたい自分に近づけます。忙しい毎日の中で、ついつい整理を怠りがちなバッグの中身だからこそ、年始に改めて整理をしてみる。そして、バッグの中身に自信を持てる自分になることで、人生は大きく変わっていくのです。
自分の1年後は「今日のランチ」の積み重ねでできている
「今日のランチ、何にしようかな」。そんなとき、あなたはどうやって決めていますか? その日の気分? いきあたりばったり? 実は、何気ない日々のランチの積み重ねが、1年後の自分を作っているんです──『美しく生きる女のお金の作法』特別編集[第1回]
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大竹のり子
ファイナンシャルプランナー株式会社エフピーウーマン代表取締役
出版社の編集者を経て2005年4月に女性のためのお金の総合クリニック「エフピーウーマン」を設立。 現在、雑誌、講演、テレビ・ラジオ出演などのほか、『お金の教養スクール』の運営を通じて正しいお金の知識を学ぶことの大切さを伝えている。『なぜかお金に困らない女性の習慣』(大和書房)、『老後に破産しないお金の話』(成美堂出版)など著書は40冊以上に及ぶ。ファイナンシャルアカデミー取締役。一般社団法人金融学習協会理事。http://www.fpwoman.co.jp/