目次

海外で目にした開発途上国の子どもたちと、米国のNPO団体に触発され、社会貢献できるグルメアプリ事業を立ち上げたテーブルクロス社長の城宝薫さん。起業当時、女子大生社長だった城宝さんはなぜ、途上国を支援する事業を始めたのでしょうか。

 (17309)

2018.6.11

飲食店予約で子どもたちに寄付、日本人に合った寄付モデル作る

STAGE編集部:テーブルクロスの事業内容を教えていただけますか。
大学3年生のときに立ち上げた事業で、テーブルクロスという飲食店を予約できるアプリを運営しています。アプリから飲食店を予約すると、予約した人数分の給食が途上国の子どもたちに届く仕組みです。給食を届ける費用は実際に飲食店に集客したことで発生する広告費の一部を充てています。
システムは自社開発で、6,000万円ぐらいの費用をかけて構築しました。ざっと1億円ほどの投資を集めて開発をスタートさせたのですが、お金に関する知識もないまま起業したので、怖さも感じずに始めることができました。今だったら、怖くてとてもできないと思います。
STAGE編集部:寄付した給食の数をユーザーや店側が確認できるといった、アプリのアイディアは最初からあったのですか。
事業自体は日本人に合った寄付モデルを作ろうという思いからスタートしました。寄付したお金がどうなるかは、気になるものです。そこが透明化されていることによって、寄付に加わる人が増えるということは分かっていました。
ただ、ポケットマネーで寄付するのは日本に合わないと感じていました。日本人に合うのは、ペットボトルのキャップを外して捨てるように、お金の負担はないけど、習慣の中でやることだと思ったのです。それで予約に目をつけ、寄付の行方を見える化したわけです。
STAGE編集部:学生時代に起業されたそうですが、当時から力になる仲間を引き寄せる何かがあるように感じました。どんな行動をしていましたか。
当時はゼミの先輩やベンチャー界隈の飲み会であった人ら知り合いで少しでも頼りになりそうな人には、次々に声をかけていました。最初の発起人の1人を探してくれたのは、小学校からの幼なじみでした。
自分の中で自覚はなかったのですが、あるメディアに「巻き込み力がある」という表現をされました。思いは言葉にしないと分からないものです。経営は自己表現の場ですから、言葉で伝えなければならないのは同じでしょう。だから、自分の考えていることややりたいことを常に発信するようにしてきました。それがうまくいった理由かもしれませんね。

テーブルクロスの原点はインドネシアと米国での発見

 (17327)

STAGE編集部:社会貢献につながる事業を始めるに当たり、直接のきっかけになる出来事はあったのでしょうか。
今の事業のきっかけになった最初の出来事は、小学生のときにインドネシアへ行ったことです。私と同じ年ごろの子どもたちがごみの山に入ってお金になるものを探し、換金していました。その姿に衝撃を受け、寄付やボランティアに目を向けるようになったのです。
中学、高校生のとき、米国に短期間行かせてもらい、現地で見てきたことにも影響を受けました。障害者支援のNPO団体でしたが、きちんと利益を出しながら、社会貢献するスタンスを貫いていたのです。社会問題は単発の事業で解決できません。そこで、継続した仕組みを作ろうとした結果、そうなったようです。この考え方は私にとってドンピシャリでした。
STAGE編集部:仕組み作りを学ぶために大学へ進学したと聞きました。
祖父が起業家でしたので、幼いころから将来の夢が社長でした。だから、自然な形といえなくもないのですが、米国で見たような仕組みをつくるため、大学で経済について学びたいという思いがありました。
大学時代に飲食店向けの広告会社でアルバイトしたとき、業界の独占的なマーケットを知り、店舗のオーナーさんを幸せにすると同時に、途上国の子どもたちも幸せにできる仕組みがあったらいいと考えるようになりました。それが今のテーブルクロスにつながっています。

途上国の子どもたちに学ぶ本当の幸せとは

 (17335)

STAGE編集部:事業は他社のサービスと差別化でき、しっかりと社会貢献の役割も果たしていますが、会社として今後のビジョンをどこに置いていますか。
事業は5年目に突入しましたが、レベルは2年ぐらいで達成できそうなものです。自分の思いの10%か、20%しか達成できていないように感じます。
サービス面はまだまだですね。飲食店数を増やし、ユーザーがボタンを押したくなるような高いクオリティーのサービスに改善しなければいけないでしょう。それと飲食店など広告主をもっとハッピーにできる仕組みも考える必要がありそうです。
今後は、ネイルサロンやヘアサロンなど他の予約をしても、支援ができる仕組みにしたいと考えています。
STAGE編集部:直接、途上国へ行くことを大切にされています。現地へ出向くことで気づきはありますか。
毎回、飲食店さんやパートナー企業さんと現地へ行くのですが、本当の幸せを逆に教えてもらっている気がします。貧しいから支援するっていう感覚があるかもしれないですが、彼ら彼女たちって今の現状に満足していて、途上国の子どもたちは家族で食事をすることをとても楽しみにし、弟や妹の世話を当たり前のようにしています。私の目には家族と一緒にいる幸せな気持ちに溢れているように見えるのです。お金がない=幸せじゃないかというとそうではない。行く度に気付かされますね。
私たちが給食を支援するようになり、ごみ拾いなどで学校に来なかった子どもたちが、登校するようになりました。もともと100人ぐらいしか児童がいなかった学校に、500人近く増えたことがあります。それが、文字の読み書きできる環境につながった成果など、成果を数値で振り返ることもできますが、事業の成果以上のものを子どもたちからもらっているような気持ちになります。
 (17357)

 (17361)

城宝薫さんにとってお金とは

STAGE編集部:学生時代に起業し、会社が大きくなる過程でお金に対する考え方は変わりましたか。また、城宝さんにとってのお金とは何ですか。
私にとってのお金はKPIのような指標です。社内には1カ月で何件の契約を取らないといけないという指標があるのと同じ感覚なのです。この感覚は学生時代とあまり変わっていません。お金が増えるとサービス規模が大きくなりますから、お金はパワーだという意見も分かりますが、自分の価値観だとKPIみたいな存在です。
女性の立場からすると、会社の成功がそのままプライベートを含めた人生の成功になるかといえば、ちょっと違うと思います。男性だと社会的な成功が人間の確立に結びつくかもしれませんが、女性は母性本能で子どもに時間を使いたいと思うのではないでしょうか。ただ、私にとってその部分は未知数なので、現時点ではまだ1つの指標です。
 (17346)

お金とはひとつの指標(KPI)である(城宝薫)
城宝薫さん

城宝薫さん

千葉県出身。立教大学経済学部卒。中学、高校時代から社会貢献活動に携わってきたほか、大学在学中の2012年に企業と提携して新商品を開発する学生団体ボランチを創設。2014年に株式会社テーブルクロスを設立し、社会貢献型のグルメアプリの運営を開始。サービス実績は2018年6月18日現在、掲載1万店、契約3,000店、給食数約17万食、アプリダウンロード数35万以上を誇る。

関連する記事

「学生時代に起業したグルメアプリ事業、利益を上げながら社会貢献するワケ〈城宝薫〉」のライター