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気軽に外出できない状況が続いています。せっかくなので、家で過ごす時間を溜まりすぎたモノを、捨てる作業に当ててみるのも良いのかもしれません。ドミニック・ローホー著『捨てる贅沢』 より、捨てることで心がラクになる考え方をご紹介します。

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2020.3.18

捨てることは自分自身と向き合うこと

実際にモノを処分することはそれほど難しくも複雑でもありません。捨てる、ただそれだけのこと。
20ページより引用
フランス生まれフランス育ちの著者ですが、パリ大学、ソルボンヌでアメリカ文学の博士号を取得。イギリスやアメリカ、日本において教鞭をとった経歴を持っています。日本在住歴は30年以上にわたり、執筆してきた著書はヨーロッパ各国でベストセラーとなっています。
本著は、所有物を減らして、身軽に生きる考え方のコツがまとめられています。
巷でシンプルに生きるミニマリズムが流行っているとはいえ、実際に自分の持ち物を区分けして処分するという作業はなかなか大変なものです。いらないものを処分するということは、後悔・損失・無駄遣い・誤った判断・もったいない、といった心の痛みを伴うと著者はいいます。
たしかに、片付けをしていると、「どうしてこんなものを買ってしまったのだろう」「いつか使うのかもしれない」といったさまざまな感情が行き来するものです。
モノを処分するということは、自分の持ち物と向き合うことで、手間も時間も取られます。いわば、自分自身と向き合う時間であるといえるでしょう。
しかし、著者は、捨てる、ただそれだけのことだと断言しています。本当に必要なものだけを残して、正しく捨てる技術を身につけたいものです。
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モノを多く持ちすぎると性格に影響する

無意識に、モノを溜め込み続けることで私たちはより欲求が多くなり、気難しく、不安定になってくるのです。
44ページより引用
最初に著者は、自分の所有物の多さに気づくことの大切さについて語っています。
たとえば、2年間で1回しか着ていない洋服。再び着る日が訪れるのだろうかと、クローゼットで見るたびジレンマに陥るものです。
このような躊躇は、小さなカオス状態を記憶に生じさせ、潜在的に「どうしよう」と、ずっと考えていることにつながります。
また、モノを多く持ちすぎると、それは性格にも影響すると著者は触れています。
何かをほしいと思っているときは、誰しも心あらずになります。落ち着きがなくなり、なんとなくソワソワしてしまいます。頭はそのモノでいっぱい。持てば持つほど、さらに多くを持ちたいとつい願ってしまうものです。
こうした考え方はモノだけに限りません。たとえば、SNSのつながりなどにおいても、同様の傾向が出てくることがあります。そのつもりはなくても傲慢な態度が生まれてしまったり、他人にも自分の欲求を押し付けてしまったり。
モノを溜め込み続けることは、知らないうちに性格にも影響が出てきそうです。
自分でコントロールできる範囲をキープすることは、良い精神状態を作り上げることにもつながるのかもしれません。
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決断するということはスポーツに似ている

モノを捨てるためには、決断しなくてはいけません。しかし、本当に捨てていいのだろうかと、毎回迷いが生じるものです。
決断するということは、スポーツに似ていると著者はいいます。つまり、筋トレのように、常日頃の訓練が必要であるのだとか。
正しい決断をスピーディーに下すためには、訓練が必要です。そのためには、日常的に行っている、さほど重要ではない小さい決断が重要になってくるようです。
しかし、その量があまりにも多いと、かえって混乱してしまいます。下さなくてはならない決断の数を、まずは少しでも減らして軽くすることから始めてみると良さそうです。
たとえば、雨の日に履くレインブーツは1足にする。モーニングコーヒーを飲むマグは、いつも同じ場所に「ある」ようにする。
小さな選択は、朝から晩まで精神と潜在意識のスペースを占領しています。できるだけその数量を減らす工夫を繰り返すことで、適切に捨てる決断力が日々訓練されていくといえるでしょう。
できるだけ痛みが少ない、うっかり買ってしまったものなどから着手していくとうまくいきそうです。
持ちすぎているモノをスッキリさせて、本当に必要なモノを大切に使う贅沢な生き方をしていきたいものです。
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タイトル: 捨てる贅沢
著者: ドミニック・ローホー
発行: 幻冬舎
定価: 1,200円(税抜)
ナカセコ エミコ

ナカセコ エミコ

(株)FILAGE(フィラージュ)代表。書評家/絵本作家/ブックコーディネーター (図書館司書・産業心理カウンセラー・キャリアカウンセラー)。女性のキャリア・ライフスタイルを中心とした書評と絵本の執筆、選書を行っている。「働く女性のための選書サービス」“季節の本屋さん”を運営中。

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